第八話「手続き完了」

ロードスター物語
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元々は、時間潰しのために始めた引越し屋のバイトだが、ユーノスロードスターの資金の維持費を稼がないといけなくなった。

相変わらず、誰とも話すこともなく黙々と作業をこなす。

何も考えずに身体を使った仕事、さらに余計な気遣いも必要ないので自分にはあっていると思う。ただ、一生続けるには夢がなさすぎる。

(・・・これから、どんな生活になるんだろう・・・)

あと1週間もしたらケイスケはサラリーマンとして働き始める。

サラリーマンは人生の終着点。そのために受験勉強をして大学に通い、就職をした。これからは会社の駒として働き、その間に恋愛をして結婚、そして子供が生まれ家を買う。子供の成長を喜び、そして定年退職。

ロックじゃない。どう考えてもロックじゃない。でも、これからは普通の生活を送るんだ・・・。

休憩中に、ひとり将来について考えているけど夢や希望が浮かばない。そんな思いに耽っているとケータイに電話がかかってきた。

「はい、けーすけ」

「蛙水さんのケータイですか?」

「はい」

「マツダアンフィニの花田です」

(・・・お姉さんか・・・)

事務的な声で分からなかったけど、デーラーのお姉さんからの電話だった。

「振り込みの確認ができました」

「はい」

「後は車庫証明、その他の書類が届き次第、手続きに入ります」

「お願いします」

「いつ頃、持って来られますか?」

「明後日に実印ができるので、明後日に印鑑証明と一緒に持っていきます」

「明後日ですね。お待ちしています」

「はい」

「失礼します」

3月中には手続きが完了する。

ーーー

朝から実印を取りに行き、その足で市役所に行って印鑑登録。印鑑証明を貰い、必要な書類か揃った。

お姉さんから貰ったメモと見比べ足りない書類がないことを確認。

はやる気持ちを抑え、冷静なフリをしてハイライトに火をつける。

(金も振り込んだし、書類を出せば終わりだな・・・)

ディーラーに着くとお姉さんが笑顔で迎えに出てくれた。

「書類は問題ないみたいね。ちょっとクルマ見て行く?」

「お願いします」

「カギ取ってくるから」

「はい」

これから相棒になるユーノスロードスター。いつもは大通りから見える場所に並べられていたが、今日は奥に移動されている。

「お待たせ。どう? 仲良く出来そう?」

(質問の意味が分からない・・・)

「実は、君のすぐ後にも、この子が欲しいって人が来たんだ。本当にギリセーフだったんだよ。振込が一日遅れてたらアウト。本当に良かったよ」

「そうなんすか」

「新しいロードスター(NB)が出て、NA(ロードスター)って結構、中古車に流れているんだけど、なかなか良い程度のクルマって少ないの。やっぱりスポーツカーだから無理に走らせていたり、修復歴があったりする子が多いのね。この子は少し走っているけど、ボディはしっかりしている。初めての相棒としたら当たりだと思う。それに何となく、君と一緒にいる姿がしっくりくるんだ」

「そんなもんすかね」

照れるので口にはしないけど、何となく他のクルマじゃなく、コイツが良いと感じてはいる。

お姉さんが言っているようにユーノスロードスターは多くの中古車が出回っている。

コンビニで見た中古車雑誌にも多くのロードスターが掲載されていた。フルノーマルからサーキット走行がそのままでできるくらいカスタマイズされていたり、少しの段差でもお腹を擦ってしまうクルマ、ネガキャン、ハの字・・・。

コイツを買うことに決めてから、沢山のロードスターを確認したんだけど、なんかしっくり来なかった。

「一応、説明しておくと納車までにオイル類は全て交換する。タイベル(タイミングベルト)は前回の車検時に交換しているから大丈夫だと思う。幌も状態が良いので問題はない。エンジンを含め、機関はまだまだ元気。ワイパーのゴムも変えておく。後、タイヤなんだけど交換した方が良いと思う。車検には通るんだけど、そろそろ替え時だろうね」

「えっマジっすか? タイヤってどれくらいします?」

「1本7,000円位かな。工賃を含めて3万円位。ディーラーでやるより、オートバックスとかの方が安いよ」

「結構、掛かりますね・・・」

「あっ、任意保険、入った?」

「任意保険?」

「若いからちょっと高くなるけど任意保険は入らないとダメだよ。月1万円位かな?」

「その任意保険保険ってどこで入れば良いんですか?」

「うちでも手続きできるけど・・・。どうする?」

「入った方が良いんですよね?」

「と言うか、入らないとダメだよ」

「じゃ手続きお願いします」

「うん。今用意するね」

(・・・クルマってお金がかかるな・・・)

勢いでロードスターを買うことにしたけど何も知らない。お姉さんと仲良くしてなかったら自分では分からなかっただろうな。

任意保険の手続きをして帰る。

「来週には納車だね。準備できたら連絡するね」

とりあえず、手続きは完了した。後は納車を待つばかり。

帰りに見たロードスターは少し嬉しそうだった。

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