第七話「印鑑証明、そして車庫証明」

ロードスター物語
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ファミレスでお姉さんと食事を取り、真っ暗な部屋に戻る。

(とりあえず、明日契約して入社式までバイトだな・・・)

今日は生まれて初めて、大きな決断をした・・・。ような気分だ。

(ユーノスロードスター・・・)

人生は、多くの決断をするタイミングがある。ただ、ケイスケはずっと避けてきた。

浪人して進学した大学、さらに大学院、そして就職先。

自分の夢や希望を持って選択をした訳ではなく、ただ周りに流されて、言われるがままに決めただけだ。

動機は不純だが、初めて自分の意思で決断をした。

(いや〜。まだドキドキするわ・・・)

初めて自分のクルマを買う。それも9年落ちのユーノスロードスター。

納期はまだ先だが手に入れたら、どんな経験が出来るかをひとり妄想しながらベッドに潜り込む。

その晩は興奮してなかなか寝付けなかった。

---

「こことここにハンコを頂けますか?」

ディーラーでお姉さん(花田さん)に言われるがまま、クルマを手に入れるための書類を作成する。

「うん。大丈夫そうですね。お支払いは銀行振り込みでお願いします。振込先は、ここに記載されている口座にお願いします」

「はい。今日中に振り込みます」

「あとは、手続きに必要な書類を持ってきてください。車庫照明と印鑑証明、あ、実印も必要ですね」

「じついん?」

「委任状に実印が必要です」

「すいません。実印なんて持ってないんですけど・・・」

車を買うのには実印と印鑑証明が必要らしい。先月まで学生をしていたので、そんな仰々しいモノは持っていない。

「ちょっと免許見せて」

「はい」

「住所、茨城になってるけど、住民票移した?」

「移しましたよ」

「まずは免許証の住所を移さないとね。最初に市役所に行って住民票を取ってくる。次に警察署に行って『記載事項の変更』の手続きをしてきて。そうすると免許証の裏に新しい住所を書いてくれるから」

「はい」

「次にハンコ屋さんに行って『実印』を作るの。どんなハンコでも良いんだけど、ちゃんとした実印を作っておいた方が良いと思う。1万円位で作れると思う。早くても2、3日かかるから、出来るだけ早く行ってね」

「この辺にハンコ屋さんってあります?」

「駅の反対側にあるよ。後で教えてあげる。で、実印が出来たら市役所に行って実印登録ってのをするの。そうすると印鑑証明を発行してくれるから、印鑑証明と実印を持ってきて。それで手続きが進められるから」

「なんか面倒くさいっすね・・・」

お姉さんがキツい目つきで睨む。

(なんか、すいません・・・)

「とりあえず、委任状がないとナンバーが取れないから、実印と印鑑証明書ね。あと車庫証明も必要」

「駐車場はアパートの下に月極駐車場があるので、そこを借りようと思っています」

「不動産屋さんで借りるときに「車庫証明を取るから書類ください」って言えば『保管使用承諾証明書』くれるから。それと、この『保管場所の所在地・配置図』を書いて、さっき渡した『自動車保管場所届出書』を持って警察署に行けば、申請してから中2日で車庫証明くれるから、全部揃ったら持ってきて」

(ヤバい・・・ついていけてない・・・)

「えっとハンコ屋に行って実印つくるでしょ。で、警察に行って住所変更、で不動産だっけ?」

「・・・ちょっと待ってて、メモ作るから」

「なんか、すいません・・・」

思ったより手続きが面倒くさい・・・。

今までクルマを買ったことがなかったから、知らないことだらけで何をして良いのか分からない。

(金を払って終わりかと思っていたのに)

ーーー

お姉さんのメモの通り、まずは市役所に行って住民票を取り、警察署に行って免許証の住所変更。

そして駐車場に書かれている電話番号に電話して、不動産屋に出向く。ハンコ屋で実印を作ってもらう。

もう一度、警察署に行って車庫証明の申請・・・。

半日で引っ越してきた街を歩き回り疲れきっていたら、ケータイにお姉さんから電話がかかってきた。

「どう、順調?」

「めっちゃ疲れましたよ。あとは印鑑証明の手続きだけです。あと、車庫証明を取りに行けばOKだと思う・・・」

「よく頑張ったね、あと少し頑張れっ!!」

(・・・いくつになっても褒められると嬉しい・・・)

「今週中には契約に行きます」

「うん。待ってるね」

あと一息でユーノスロードスターが手に入る。

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