第五話「NA or NB」

ロードスター物語
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欲しいクルマは、ハイパワーで、ゴージャスなものだ。豪華な装備、大排気量のエンジン、そしてイカつい見た目。そんなクルマに乗りたい。

漠然と考えていた。

助手席だけど、初めて乗ったユーノスロードスターは衝撃的だった。

心が揺らぐ。

約10分間の短い間だったがロードスターの楽しさは十分に伝わった。

お姉さんの運転が上手いのもあるが、思い通りに動いてくれる車は『人馬一体』

言葉にすると陳腐になってしまうが、運転者とクルマが意思疎通できている。

「ロードスターは小さい車だから、車両の間隔も掴みやすいし、FRで素直に曲がってくれる。私もロードスターにしか乗ったことないから他の車は知らないんだけど、ハンドリングが他の車より断然良いらしいよ」

「そうなんすね」

「どう? 見た目も可愛いし、走りも良い車なんて最高じゃない? あっ、忘れてたんだけど、ロードスターは一台二役なのだ。ちょっと見てて」

降りた車の中にお姉さんが頭から戻る。何かをイジるとリトラクタブルライトが開く。

「ちょっと見てみて。目を閉じているはクールだけど、目を開けると印象が変わるんだよ!」

お姉さんと正面に回る。

確かに丸いリトラクタブルライトが開くと整った美しさとは変わり、小動物、いやカエルのような可愛さを感じる。

「ね、いつもはクールビューティなんだけど、お目々を開くとプリティな感じになるでしょ? 女子ウケ間違いなしっ!」

「良いっすね」

「惚れたでしょう? ロードスターは本当に良いクルマなんだよ」

「良いっす」

「ちなみになんだけど、このリトラクタブルライトって今の車じゃ作れないんだって。安全基準に合致しないとかなんとかで。新しいロードスター(NB)も無くなっちゃったしね。このお目々があるからロードスターっぽいのに」

このお姉さんと話をしているとロードスターが、この世で一番良いクルマに感じてならない。

「あっ、ごめん。仕事しなくちゃ。中でコーヒーでも、いかがですか?」

(ちょっと待て。色々とツッコミどころがあるぞっ。今までのくだりはセールストークじゃなかったんかいっ!)

「ご案内します」

(おお、営業っぽい)

「いらっしゃいませ〜」

店内に案内されると窓際の席に案内された。席につき、コーヒーを頼む。

「店長の豊田です。本日はロードスターをお探しですか?」

「あっ、はい」

(てっきりお姉さんが相手をしてくれると思っていたのに・・・)

「新しいロードスター(NB)も見ました?」

「いえ」

「ひとつ前のロードスターも良いですが、新しい方が剛性も上がり、エンジンも1,800ccになって走りが楽しくなっていますよ」

「はあ」

「今なら年度末セールなので勉強しますよ。どうですか、見積だけでも見てみますか?」

「はあ」

「車は絶対に新しい方が良いですよ。機械としての性能もそうですが、安全性能も上がっているし、デザインも全然、洗練されていますよ。特にロードスターの場合、初代に比べ、内装が全然違う。初代はなんというか安っぽいんですよね。新しいロードスターはマツダの自信作ですよ。初代の良さを残しつつ、正常進化しています。10年前のデザインと今のデザインじゃ断然、今の方がおすすめですよ」

「車好きなら、新しい車にどんどん乗り換えるべきですよ。新しいロードスターの見積、作ってきますね。その間にこちらにご記入をお願いします」

来店者記入用紙を渡され、店長は去っていった。

店長の話は、正論なのかもしれない。

10年前の技術で作った車と最新の技術で作った車じゃ性能が上がっているのは当然だ。だけど・・・。

「どうぞ」

お姉さんがコーヒーを持ってきてくれた。

「店長、新しい(NB)ロードスターを売りたいんだよ。騙されないでね」

そう囁いて、コーヒーを置いていってくれた。

騙されるも何も、まだロードスターを買うことすら決めていない。

でも、買うなら初代(NA)ロードスターだよな。お姉さんと仲良くなれそうだし・・・。

「お待たせしました。え〜と、蛙水(あすい)さん。蛙水さんは学生さんですか?」

「もう少しで就職します」

「あ〜そうなんですね。うちの花田とは知り合い?」

「花田さん?」

「あのロードスター好きの」

店長は目でお姉さんを見る。

「あ〜、知り合いではないです。ちょっと前にロードスターを見ているときに声を掛けられたんです」

「花田、派手な黄色の初代ロードスターに乗っているんですよ。また車検を通すみたいな話をしているけど、もう十分乗ったんだから乗り換えた方が良いと思うんですけどね。あっ、ごめんなさい。余計な話でしたね」

新しいロードスター(NB)の見積額は乗り出しで230万円。

(新車だとそんなもんだよな・・・)

「新しいロードスターは初代のロードスターの良いところは残しつつ、安全性能、走行性能を進化させています。ミッションも初代は5速でしたが、6速になっていますし、初代にはなかったエアバッグも、運転席エアバッグだけではなく、助手席にも標準装備になっています。ABSもオプションでつけれますよ。見積には入れてませんが。あと、エンジンも1,800ccになったのでパワーもありますしね。今ならこの金額でやります。結構、頑張ったんですよ。他にもディーラーオプションもサービスできます。どうですか?」

「中古の赤いロードスターも見積いただけますか?」

「いや〜。あの車も安いし良いクルマなんですけど、走行距離も伸びてるし、9年落ちですからね。新しいロードスターの方が良いですよ。ここだけの話なんですが、初代は結構、あちこちに問題があって、新しいロードスターは改善しているんです。これから長く乗るなら新しいロードスターの方が良いと思いますよ」

「クラシックレッドのロードスターの見積書です」

お姉さん(花田さん)が見積書を持ってきてくれた。店長は面白くない顔をしているが・・・。

車体の販売価格、税金、メンテナンス費用を加えて55万円。

(乗り出しで55か・・・)

「ちょっと考えさせてもらって良いですか?」

ちょっと不機嫌になった店長から、見積有効期限についての説明を受ける。

「3月中に契約をして頂ければ、この見積額でやらせて頂きます。蛙水さんの担当は花田にしますので、何かあったら花田にお伝えください」

その場で、お姉さんが僕の担当に任命された。

NB8C主要諸元

価格:218.5万円

全長×全幅×全高:3955×1680×1235mm
ホイールベース:2265mm
重量:1030kg
エンジン型式・種類:BP-ZE・直4 DOHC
排気量:1839cc
最高出力:145ps/6500rpm
最大トルク:16.6kgm/5500rpm
トランスミッション:6速MT
タイヤサイズ:185/60R14

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