第三話「黄色の限定モデル」

ロードスター物語
スポンサーリンク

(・・・楽しいクルマねえ・・・)

車好きから聞いた言葉が頭に残っている。

雨の中の帰り道、数日前にディーラーに並んでいたロードスターが気になった。

(ちょっと見て行くか・・・)

スニーカーに雨が染み、気持ち悪い。

(あった・・・)

クラシックレッドのユーノスロードスター。雨に濡れた姿は、しっとりと艶っぽい。

リトラクタブルライトを閉じているロードスターは、なめらかで色気のある日本女性のような佇まいをしている。

(・・・ナンパ車だけあってカッコ良いんだよな・・・)

僕の勝手なイメージだが、ユーノスロードスターは走り屋が好む車ではない。

「なんちゃってスポーツカー」つまり速さを求めていない。

「ご覧になられますか?」

急に背後から声を掛けられ焦りまくる。制服を着ているので、ディーラーの人だと思う。

(・・・あせった。お店の人か・・・)

「は、はい。お願いします」

20代半ば、小柄だけど、凛とした雰囲気をまとった女性に微笑みかけられる。

「NAロードスター、可愛いですよね。私も乗ってるんですよ」

「そうなんですか・・・」

(きれいなお姉さんだな・・・)

「NB(新しいロードスター)よりNAの方が可愛いですよね」

「はい・・・」

「Vスペのネオグリーンの落ち着いたカラーも良いんだけど、クラシックレッドの可愛いさは抜群ですよね。NAって可愛いクルマじゃないですか〜。なので、クラシックレッドか、Jリミのサンバーストイエローの二択だと思うんですよね。ネオグリーンも人気だったけど、ジェントルマンってイメージなんですよ。まだ落ち着く年齢じゃないっていうか、分かります?」

「・・・そうっすね」

「良かったら、裏に止めてある私のJリミテッド、見ます?」

「はあ・・・」

きれいなお姉さんがロードスターに乗っているのも、びっくりだが、お姉さんの口から出てくるロードスター愛に圧倒される。

ディーラーの裏にある従業員用の駐車場に移動しながらも、お姉さんの話は止まらない。

「NAの場合、パワーウィンドウはオプションだったので、あっ、でも大体付いてるか・・・」

「ロードスターって比較的、フル装備で買われた方が多いんですよ。なので基本的にはメーカーオプションは付いている車が多いんです」

「そうなんすか」

「ちなみに、ロードスターに乗るならマフラーと車高調は変えた方が良いですよ」

「はあ」

「(車高を)落とし過ぎると下品になるけど、少し落とした方が一体感が生まれ、オシャレに見えるんですよね。どうです? この子も少し落としているんです。可愛いですよね」

「・・・そうですね」

「ロードスターは車高が低いから、今日みたいな(制服の)スカートだと・・・見えそうになるし、ロングスカートだとドアに挟まりそうだし、女子としては服装に気をつけないといけないから大変なんですよ」

(見せてもらっても構わない。いや、むしろ見たい。見せてください)

確かにロードスターは座席が低いので、乗り込むときにかがむ必要がある。

必然的に足を開かなければ乗り込めないので、パンツを見るチャンスがありそうだ。

「私も最初、クラシックレッドの子が欲しかったんだけど、Jリミが出たらこっちかなって」

(話の脈絡の無さは、女子特有なんだよな・・・)

「そうっすね。黄色のロードスターも可愛いすね」

「ですよね。良かった。もうすぐ車検なんだけど、通すつもりなんですよ。まだまだ乗るつもりなんです」

「ちなみに、Jリミテッドの特別色は『サンバーストイエロー』と言うんですけど、塗装工程が他の色に比べて、約4倍の工程が必要で、コストがあがっちゃうらしいんです」

「へえ、そうなんすね」

「内装も、ナルディ製ウッドステアリングでしょ。それにシフトノブとウッドパーキングレバー。特別な装備になっています」

「ほう」

「他にも、パワステも標準装備だし、パワーウィンドウ、後なんだっけ? つまり、可愛いだけじゃなくて、色々とついてお得だったんですよ」

ロードスターより、よく喋るお姉さんに興味の矛先が変わってくる。

(お姉さん、いくつなんだろう? 可愛いなあ)

雨の中、ディーラーの従業員用駐車場でお姉さんの愛車の自慢話を聞いている・・・。

「明後日とか予定あります? 晴れるらしいし、また来てくださいよ」

「へっ?」

(意味が分からん。お姉さんの黄色のJリミテッドの自慢をされただけじゃん?)

まあ、良いっちゃ良いんだよ。

きれいなお姉さんとのひと時に価値がない訳ではない。

どちらかと言うと楽しかったし。

でもさ、ねぇ。

帰り際に見たクラシックレッドのロードスターが少し寂しそうに見えた。

ユーノスロードスターのJリミテッドは、1991年8月3日に限定800台で発売された限定モデルです。

ユーノスブランド創業2周年を記念した限定モデルで、採用された特別色「サンバーストイエロー」でした。

パワーステアリングをはじめ、パワーウインドウ、アルミホイール、ナルディ製ウッドステアリング、シフトノブ、ウッドパーキングレバー、スカッフプレートなど豪華なアイテムを標準装備していました。

ちなみに、Jリミテッドの発売のタイミングで小変更が行われ、運転席のパワーウインドウは、ワンタッチ開閉タイプへと進化しています。

さらに、センターボックスにトランクオープナーが搭載され、使い勝手が大幅に向上しています。その他にも細かい部分が改良されています。

Jリミテッドは特別色の「サンバーストイエロー」そして、豪華装備を標準装備していましたが、標準車モデルのプラス20万円(190万円)で販売されました。800台はすぐに完売してしまいました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました