第一話「別れ。そして出会い」

ロードスター物語
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20世紀最後の春。

2000年3月、夜の西武新宿駅周辺の繁華街は人でごった返している。

大学の『追い出しコンパ』があちこちで開催されている。

最後の「学生飲み」を楽しむ卒業生と、まだ自由時間を過ごす後輩たち。

同じ時間を共有しているが、それぞれの想いは異なる。

(これからは社会の駒として働くんだな・・・)

ケイスケは追い出される卒業生のひとりだ。

大学入学から修士課程までの6年間を過ごした学生街を離れ、縁もゆかりもない街に引っ越した。

今夜は、とくに仲の良かった後輩が、ケイスケのために集まってくれた。

「頑張ってください」

「寂しくなっら遊んであげるから、いつでも連絡くださいね」

「そんな顔しないで。電車で1時間ちょっとでしょ」

ちょっと涙が出そう・・・。

(後輩に元気つけられる俺って・・・)

「行くわ。またね」

後輩たちと別れ、乗り慣れない電車で、ひとり、知らない街に帰る。

別に感傷的になっている訳ではない。

これから始まる新しい生活にビビっている訳でもない。

ちょっと社会に出ることに不安があるだけだ。

これから始まる社会人としての新しい生活には夢も希望もない。

もっと学生生活を続けたかったというのが本音。

---

最寄りの駅から新しいアパートまでは歩いて15分。

まだ、引っ越しをしてきて3日目なので、誰も知り合いのいない街。

(酔い覚ましに、少し歩くか・・・)

大通り沿いを歩いてみる。

コンビニにファミレス・・・。

何でもある。

(生活には困らなそうだな・・・)

大通り沿いのディーラーに置かれているクルマに目を引かれた。

うっすらとした灯りに照らされた小さいクルマ・・・。

(・・・ロードスターじゃん・・・)

ケイスケがクルマに興味を持ち始めた頃、1989年に発売されたのがユーノスロードスターだった。

当時、雑誌で特集が組まれていたので覚えている。

(クルマか・・・。社会人になったら買いたいな・・・)

自動車の免許は大学入学前に取得した。

学生時代もクルマが欲しかったが、お金がなく、ローンも組めなくて断念した。

ユーノスロードスターは欲しいクルマではなかった。

スカイライン、シビック、インプレッサ、RX-7、ランエボ・・・。同世代の車は、速さを求め、進化を続けている。

そんな本格的なスポーツカーとユーノスロードスターは方向性が違う。

ユーノスロードスターは発売当初から「運転の楽しさ」を求め、スピードを求めていない。

ジャンル的には「ライトウェイトスポーツ」だけど、ハチロク、シビックのように走り屋に好かれるクルマではない。

本気で速さを求めるクルマと言うよりはファッションに近い。

簡単にいうと「ナンパな車」

ただ、今夜はなんとなく気になる。

「・・・ユーノスロードスターって、今いくらなの?」

酔いもあり、ひとりつぶやく。

【年度末決算セール】おすすめ車両
金額 40万円
年式 平成2年
走行距離 12万キロ
修復歴 なし
車検 なし
エアコン、パワステ、パワーウインドウ

(走行距離が12万キロ、9年落ちで40っか・・・)

ユーノスロードスターに興味はない。

クルマは欲しい。今すぐにではないけど、いつかは手に入れたい。

クルマは男としてのステータスだ。

大きなエンジン、有り余るパワーのクルマが欲しい。

走り屋になる気はないので、本気のスポーツカーでなくては良いが、有り余るパワーが欲しい。

レガシィツーリングワゴンのようなスポーツ走行も楽しめ、実用性を兼ね備えたクルマが良い。

社会人になったら、彼女を作ってドライブデートを楽しみたい。

そして結婚、子育て。ローンで家を買い、毎日、ローンの返済のため、家族の幸せのために馬車馬のように働く。

ドライブをする彼女もいないし、とりあえずクルマは必要ないな・・・。

クルマも欲しいけど、彼女が欲しい。

(・・・まずは彼女だな・・・)

まだまだ夜は寒い。ハイライトに火をつけ、家路を急ぐ。

NA6CE主要諸元

価格 170万円

全長×全幅×全高:3970×1675×1235mm
ホイールベース:2265mm
重量:960kg
エンジン型式・種類:B6・直4 DOHC
排気量:1597cc
最高出力:120ps/6500rpm
最大トルク:14.0kgm/5500rpm
トランスミッション:5速MT、4速AT
タイヤサイズ:185/60R14

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