電車の中の悪夢。人生最大のピンチ

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その悪夢は寒い冬、仕事帰りの電車の中で起きた。本能的に思い出すことができない記憶の奥底に仕舞い込んでいた。

ーーー

当時、僕は忙しく、毎日、終電間際まで残業をしていた。憔悴しきった状態で、同僚と軽く立ち飲み屋で飲み、急いで帰るための電車に乗った。

電車は程よく混んでいたが、運良く空いた席に座れ、軽く飲んだアルコールと疲れ、そして電車の暖気に誘発され、浅い眠りに落ちた。

どれくらい経っただろう? 僕の眠気は一気に冷めた。

(クサいっ)

明らかに、ウンコのニオイだ。僕とドアの間に座っているサラリーマンから臭ってくる。絶対に気体が漏れたニオイではない。実のニオイだ。

満員ではないけど、終電間近の電車なので、それなりに乗客がいる。みんな、この悪臭に気がつき、犯人探しを始めた。

はじめは、あちこちに分散されていた目線が、だんだん、こちらに集中してくる。僕の本能が危険を知らせる。

(このままでは、疑われる)

現に、ほろ酔いの女子二人は、僕を見てヒソヒソ話をしている。心臓がバクバクしはじめた。

「僕じゃない」

その一言が言えない。

(ちょっと待て。確信を持って漏らしてないと言えるのか? 酔っているし、寝グソをしてない確信はあるのか?)

さりげなく、膝に乗せた鞄の下に手を伸ばし、股間付近を確認する。湿っぽいが漏らしてはいない。

段々と酔いが冷めてきた。お尻には何も挟まっていない。大丈夫だ。僕じゃない。

全ての確認が終わり、目線を上げるとかなり注目を浴びている。暗黙のルールを指摘してしまった会議のときと同じ空気が流れている。

「お前、やっちまったなあ」と車両全員の目線が訴える。

(僕じゃない…。僕じゃない)

みんなに目線で訴える。

(僕じゃない。この人です)

軽く指をさし、ジェスチャーも加えてアピールする。車内が不穏な空気に包まれる。

「パルプンテ」

俯き、呪文を呟く。何故か浮かんだ呪文はパルプンテ。もうどうにでもなれ。

下を向いている僕の目線にゴツい安全靴が入り、僕の前で止まった。

(えっ?!)

訳も分からず胸ぐらを掴まれ、立たされる。ビビって、ウンコ漏らしそうになった。

「兄ちゃん、くせーぞ」

(ごもっともです。クサいですね)

ここでやっと声が出た。勇気をふり絞り、車両全体に響く声で

「いやっ俺じゃねーしっ」

言えた。言えたよ。ずっと言えなかったことが!! 発言するチャンスをくれてありがとう。おじさん、酔った表情もステキ!!

ひとことが言えてしまえば、いつものペース。おじ様に見えるようにお尻を突き出し、

「嗅いでみろよ」

なんて、偉そうにしてみた。

「クンクン」おじさんが僕のお尻を嗅ぐ。

っておじさん。嗅ぐかっ?! 普通。

潔白を証明するためと言え、恥ずかしい。電車の中で、酔っ払いにお尻を嗅がれている男。かなりシュール。

「間違いねえ。兄ちゃんじゃねえな」

疑いは晴れた。ここまで5分。

「犯人は、コイツだ」

もう、間違いない。名探偵コナンよろしく、作業服姿の酔っ払いおじさんは、ニオイの素を特定した。

(さあ、やっちまいなっ!)

もうね。僕が間違ってないときは強いの。

(オイラは、はじめから気づいていましたぜっ。手柄は親分に譲りますんで、やっちまって下さい)

「おうおう。兄ちゃんっ! 黙ってねーて何か言えよ」

「シーン」

(死んでいるのか? 同じ死ぬシチュエーションでもウンコ漏らして死ぬのだけは嫌だぞっ)

絶対に今の状況を理解しているハズ。結構、盛り上がっていたよ。便秘で溜まっていた3日分のウンチくらい。こんもりと。気づかない訳ないじゃん?

狸寝入り。。。間違いない。寝たふりをして逃げ切ろうと思っている。

(コイツ、逃げ切れると思っているのか?)

電車と言う密室で逃げ切れる訳ないんだよ、ルパンくん。もう、お前は袋のネズミだ。観念しな!

なんて思っていたら、電車は停車駅に到着。

ウンコ垂れはドアが開くと同時に走って逃げやがった。逃がした獲物は大きい。

みんな、目がテン。何も言葉が出てこない。

僕もその駅で降車したのでその後のことは分からない。と言うか、その車両に乗っていた大半の人たちは他の車両に移っていった。

ーーー

いつか、そのウンコ垂れを見つけたら、謝って欲しい。時間にすると数分だけど、あなたの代わりに僕はウンコ垂れだと思われていた。

スメハラだし、名誉毀損だし、色々と僕に迷惑を掛けている。

ひとこと謝罪して欲しい。誤ってもらえれば、水に流す。ウンコだけに。

おあとが、よろしいようで。

ではでは。

下ネタ

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